何年かに1回のスパンで何らかの作品にハマるわたくしですが、珍しく日本のアニメにハマっております。

その一つ、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」。

http://gagaga-lululu.jp/gagaga/oregairu/index.html

http://www.tbs.co.jp/anime/oregairu/index-j.html

通称「俺ガイル」もしくは「はまち」。先に苦言を行っておくと、略せないなら略しなきゃ良いのに。そこ日和りすぎ。

が、これ作品としては素晴らしい。個人的にはここ数年ではベスト1にあげてもいいです。あげさせてくださいお願いします。

原作本も最新7巻まで読破。なんといっても原作が素晴らしい。というか原作が素晴らしい。ちなみに、初めてiBookstoreで電子書籍を購読しました。その辺はまた別の機会に語りましょうか。

Amazonの紹介文によりますと。

 孤独に負けず。友達もなく、彼女もなく。青春を謳歌するクラスメイトを見れば「あいつらは嘘つきだ。欺瞞だ。爆発しろ」とつぶやき、将来の夢はと聞かれれば「働かないこと」とのたまう―そんなひねくれ高校生・八幡が生活指導の先生に連れてこられたのは、学校一の美少女・雪乃が所属する「奉仕部」。さえない俺がひょんなことから美少女と出会い…どう考えてもラブコメ展開!?と思いきや、雪乃と八幡の残念な性格がどうしてもそれを許さない!繰り広げられる間違いだらけの青春模様―俺の青春、どうしてこうなった。

ここであーたらこーたら書くより、原作を読んでいただければ、などと身もふたもないことを言ってみますが、アニメ版もかなり原作の雰囲気を忠実に表現できてます。原作6巻までを全12話で製作するという、ものすごい刈り込み具合ですが、原作はやけに饒舌な八幡のモノローグ満載なので(これは作者の狙い)、映像にするならこれで十分、伝わる、伝わるよ!という、メディアの違いでこんなに情報量が変わるかーってな面白現象。脚本が秀逸ですね。あと、やはり尺を稼ぐためでしょう、メインキャスト3人にテーマを絞り込んでいるということもあります。脇キャラのエピソードについてはバッサリ削いでしまってもったいなくもあるのですが、これはしょうがないな。個人的には「非モテ高校時代って男ばっかでつるんでたなー」の青春あるあるな感じが希薄になって惜しいかも。さわやか主題歌も含めて、うっかり普通のラブコメアニメかと思ってしまいます。まったくもってラブコメではなく、青春ドラマです。

話題は原作に戻って。

なにがすごいって、「ぼっち」な主人公・八幡のひねくれて卑屈な思考が、最終的に迷える者を救ってしまう。主要キャラのひとりとして、イケメンでスポーツ万能、成績もトップでしかも仲間思いで優しくていい奴の「葉山」がいるのですが、完璧超人である彼の「みんな仲良く」思想では救えない人たちを、八幡は救ってしまう。

一例を挙げると。

小学生女子仲良し4人組と、彼女らにハブられ、ぼっち化してしまった同級生のルミちゃん。葉山は例によって「みんな仲良く」で解決しようとしますが、手におえず。そこで八幡はどうしたか。
4人組を解体させる。しかも互いの不信感をあおることによって。かくして4人組は空中分解し、ルミちゃん含め5人のぼっちが誕生。4対1のプレッシャーがなくなってめでたし・・・めでたくないよ!

だが、問題はルミちゃんの望みが「みんなと仲良くしたい」のではなく「みじめな思いをしたくない」であって、八幡はそれに成功したと。作中の言葉で言うなら「問題は解決しない、だが問題の解消は出来た」

万事この感じで、八幡は欺瞞に満ちた薄っぺらい人間関係を糾弾し破壊する。

生活指導の平塚先生は、八幡のひねくれっぷり、ぼっち指向を矯正すべく前述の「奉仕部」に入れたはずなんですが、ブレない八幡の孤高さによって、むしろ周囲が変わっていくのです。

なんて斬新。凡百のエセ文芸を凌駕する、とてもライトとはいいがたいライトノベル。まいった。

直近の6、7巻あたりに至っては、八幡は自分自身が悪者、つまり「共通の敵」となって誰かを救うのです。そりゃもう平塚先生も読者もヒヤヒヤもの。ヒロインである雪乃や結衣ですら八幡にかるい不信感や嫌悪感をいだいてしまうほど。どうにもラブコメなどになりません。

しかもそんな八幡の行為は決して自己犠牲による善行などでは無く、嘘くさい人間関係への下卑た攻撃であること。すでに敗者であり底辺である八幡は、たとえ周囲のすべてを敵に回したところで、普段の居場所である敗者の座に納まるだけなので、まったく意に介さない。

何よりスゴイのは、八幡がそんな自分を全面的に肯定していること。中学時代までのさまざまな失敗によって、みずから「ぼっち」でへそまがりの生き方を選んだ八幡ですが、これまでの失敗も、ひねくれた現在も、すべてを肯定している。その上で望んだ生き方を貫いている。

もうぜひ、一読をお勧めします。できれば全巻。ほんと6、7巻がすごすぎるので。