秋の観劇そのに。全労済スペースゼロにて観てまいりました「ソウガ」。

いやデジャブではござんせん。リンクをご覧になった方にはおわかりでしょうが、ソウガは同じ物語を別々の視点から観て描いた2本の演劇なのです。

簡単に言うと、幼なじみの二人の男が、同じ目的を胸に秘めながら、考え方の違いと、運命のいたずらで別々の道を歩み、やがて敵として相見える・・・というお話です。

いや、ほんとはそれだけじゃなくてドンデン返しもあるのだけど、ネタバレは避けておきましょう。公演終了後に書くかもしれません。

前回の「亡国」の主人公は村井良大さん演ずるツムギ、今回の「相剋」は松風雅也さん演ずるオウカ。つまりそれぞれの視点で同じ物語を追っている訳です。2本を観ればさらに面白いが、それぞれ単独で観ても十分面白い、というふれこみです。

で、結論から言うと・・・面白かった、と言っておきましょう。今回の「相剋」を観たおかげで、「亡国」で物足りなかった部分が解消したし、ドラマ的にも厚みが増しました。しかしながら、それは「亡国」を観た上でのことで、「亡国」を「相剋」で補完したからと言えるでしょう。おそらく「相剋」だけを観たならば、同じく物足りなかったり、わかりにくい部分(特にツムギの変節など)、人間描写が薄い部分が気になったと思われます。

厳しい意見を言えば、この2本はやはり1本にまとめた方がよかった。「それぞれ単独で観ても云々」はちょっと厳しいと思います。上演時間が長くなってしまうかもしれませんが、うまくまとめれば150分ぐらいでできたのではないでしょうか。「二人の主人公それぞれの視点から描く」というアイデアは興味深いし野心的ですが、アイデアがカチすぎてしまったように感じました。「相剋」は「亡国」のエピローグより後の物語も描いているのですが、「亡国」のストーリーを軸に「相剋」のエピソードを盛り込み、「亡国」のエピローグ以降は「相剋」をつなげば、見応えのあるドラマ、人間描写ができたのではないでしょうか。今回のやり方ではせっかくのドラマが分散し薄まってしまったように感じました。

とはいえ、試みとしてはすばらしいし、2本とも観た人にとっては満足できる芝居だったと思います。特に役者が良かった。二人の主人公もさることながら、笠原紳司さん演ずるゲンシュウの風格とカリスマ性、郷本直也さんのデンベエの渋さに隠された器の大きさ、大人の視点と寛容性、北村栄基さんのシュゼンのクールさと権謀術数にたけた策士ぶり、知性と野心の妖しさ、ほかにも書ききれないほど役者の魅力にあふれた舞台でした。

願わくばゲンシュウ主役で一本。スピンアウト!スピンアウト!