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1970~80年代のジャズ・フュージョン、クロスオーバーが好きな人は是非聴いてくださいな。コレは素晴らしいよ。

孤高にして無比なるベースギターの賢人・アンソニー・ジャクソンの、恐らく初のリーダー作品であります。厳密には同じくベースプレイヤーのYiorgos Fakanas(ギリシャ人なので発音がわかんね)との共同名義なんだけど、やっぱアンソニーの存在感がすごいので彼のアルバムと言って良いと思う。とはいえ作曲はYiorgosで、曲がとてもいいのでその存在感も大きいのは確かなのだけれど。

過去から現在に至るエレクトリック・ベースギターの歴史においても、おいら的にナンバーワンを上げろと言われれば、アンソニー・ジャクソンを置いて他にない。そう言いきれるほど素晴らしいミュージシャンでありアーティストなのだ。単に楽器のテクニックがすごいと言うだけでなく、それらが全て音楽的に高度であり、ひいては文化的に豊かであると感じさせるのだ。芸術的と言うほどスノビズムが鼻につくこともなく、大衆性を持ち合わせながら安っぽくもない。アンソニーは自身の楽器を「コントラバス・ギター」と呼び、B-E-A-D-G-Cにチューニングされた6弦のそれは、彼曰く「アンサンブルを構成するギター族の中でもっとも低音域を担当するもの」。というとギターの1オクターブ下(厳密にはさらにその4度下)にチューニングしてギターのように弾きまくる勘違いベーシストに思えるかも知れないが、実際にはリズムの要でありつつハーモニーの低音域を支える「ベース」の役割を少しも外さない。地味すぎでもなく派手すぎでもなく、かつ個性的でありながらアンサンブルの和を乱さない。なんだこれは!と思える革新性を持ちながらも、奇をてらった部分はまったくない。誰かが「もしエレクトリック・ベースギターが口をきけたら、こう弾いて欲しいというだろう、そんなベースプレイヤー」と書いていたが、まさにそれである。

ところで、エレクトリック・ベースの達人として真っ先に名が上げられるのはジャコ・パストリアスなのだろうけど、おいら個人は思うところあって、軽々しくジャコのことを神格化したくないのだ。ドラッグとアルコールで身を持ち崩したジャコは、スーパースターとは思えぬ風体でクラブに顔パス入場しようとし、ガードマンに締め出しを食い、突き飛ばされた際の大ケガが元でこの世を去った。希代の天才ミュージシャンの悲劇的な末路に酔いしれたマスコミの喧伝によって、おいらとしてはもちろん天才であった事は否定しないが、ジャコの生涯がさらに神話的に盛り上げられてしまい、都合の良いヒーローに仕立て上げられてしまっている気がして不愉快なのだ。ジャコの死を悼むものは後を絶たないが、彼が生きていてもっとも助けを必要としたとき、すなわち精神疾患とアルコールとドラッグで苦しんでいた時期に、彼に手をさしのべた人間が何人いるというのだ? それは数えるほどごくごく少数で、多くはトラブルメーカーとして厄介者扱いで疎外していたという話だ。死んでから神様扱いは虫が良すぎる。特に日本のジャズ系マスコミ!

・・・と、一旦冷静に戻るとします。ジャコの話は長くなるのでまた別の機会に。