ちゃんと調べないで書く、というのは古今東西、一部のマスコミにありがちな傾向であり、読む側もそこを折り込み済みで、眉にツバ塗って(くさいっ)読まなきゃならんなあ、という話。

ちょっと古いニュースだが、東北楽天イーグルス・岩隈投手が昨シーズンオフ、日本のプロ野球界からメジャーリーグへのポスティング移籍を試み、最終的にはかなわなかった、ということがあった。

日経新聞系のサイト「WEBゲーテ」で、岩隈投手のインタビューが掲載されており、興味深く読んだ。この問題に関しては、メジャーリーグ専門誌「SLUGGER」でも特集されており、それと比較して読むとさらにおもしろい。

「SLUGGER」での記事は総じて、まあメジャーリーグ通のための専門誌だからさもありなんだがメジャー寄りで、岩隈サイドの認識の甘さを指摘するものだった。岩隈投手は入札によりオークランド・アスレチックスが独占交渉権を得ていたのだが、ただ一度の交渉(それも本人不在で代理人が)においてすでに決裂したというもの。報道では岩隈投手の意見は「年棒の金額が問題ではなく、交渉に当たっての誠意の問題」というものだった。アスレチックス側は契約年数と上限金額を設定し、それ以外の条件では受け付けないとの交渉態度であり、岩隈投手側の言い分(が、あるかないか聞く以前に)を受け入れる余地がなかったことを「誠意が感じられない」と受け取ったというのだ。

「SLUGGER」では、岩隈投手側のこの姿勢に疑問を持ち、「ポスティングはあくまでビジネスであり、アスレチックスの姿勢にはまったく問題はない。日本流の考え方で誠意だなんだという情緒的意見は、メジャーでは通用しない」というものだった。海外経験のない岩隈投手としては、このあたりにギャップがあったとしても仕方がないと、おいらも思った。だが一方で、過去にも岩隈投手以外にポスティング移籍はあったわけだが、このような一方的な(しかもメール一本での通達)は前例がなかったわけで、そこで面食らったり「誠意がない」と判断するのは妥当とも考えられる。いかにビジネスと言えど、メール一本ですべてがカタがつく、なんてケースはあまり一般的とは思えない。おいらの知る限りビジネスの世界こそ、信頼関係が重要なのだ。

で、このエントリにおいて、おいらがメインに言いたいことはここからだ。

WEBゲーテにおける記事には、岩隈投手側の問題として、彼の代理人である団野村氏についての苦言とも言える指摘がなされていた。この記事の結論といってもいいのではないだろうか。だが、おいらはここに違和感を持った。

いわく、岩隈投手と(シャレじゃないよ)アスレチックスが直接、膝をつきあわせて話したら起きなかったギャップが、全権を任された代理人が岩隈投手本人不在で主導したことで起きたということらしい。だとしたら、この交渉に同席していない、すなわち核心部分を知らない岩隈投手にインタビューし、かたや知っているはずの団野村氏とアスレチックス側の交渉担当の意見を聞かずして、代理人の介在がうんぬんという記事をゲーテに載せている、ということなのだろうか? 少なくとも、この記事がそのあたりの裏をとって書いている、というようには読みとれなかった。

いや、それはひっかかる。もちろん今回のインタビューによって、岩隈投手本人が核心部分を知らないことが明らかになったのならば、インタビューの価値はあったと思うが、それ以降は、聞くべき相手に聞かずして憶測で記事を書いていることにならないか?

もちろんこの記事で(ライター自身が「想像の域を越えない」と)書いている団野村氏の交渉のありようは、おいらも同様に想像する。ぶっちゃけ、代理人の失策だと。だからこそ、そこは想像にとどめず、裏をとって核心部分に迫るべきであり、「真相を知らない人にインタビューして、知っている人には聞かずに想像の域で書いている」というのでは、タイトルにうたう「メジャー交渉決裂、その真相を究明する」に値しない。

そのつもりで岩隈さんにインタビューしたけど、何もわからなかったので、締め切りもあるしとにかく書いちゃおう、ってわけじゃ・・・おっとこれも想像の域ですね、あいすまん(苦笑)