思うに、ホンダには驕りが無かったと言えるだろうか。

80~90年代、セナ・プロスト時代にF1を席巻したホンダだが、その強さの秘密は、日本的な技術志向、開発力、徹底した品質管理、そしてバブルマネーにあったと言っても過言ではない。その成功体験のテイストオブハニーが忘れられなかったのか、2000年以降の復帰に際しては、「またすぐにトップチームへと返り咲けるさ」というシナリオを勝手に描いていたのではないか。ポディウムの頂点は空けて待っているものと思ってはいなかったか。

実際には、ホンダ不在の間にホンダ流の開発力を身につけたライバルチームが先を走ってしまったのである。そして何より、F1が先端技術志向から、戦略・戦術指向へとシフトしてしまったことが大きい。大パワーでブッちぎるより、サーキットの特性に合わせて、給油量とピットインのタイミングを完全にコントロールすることでクリアラップの率を高める走り方。フェラーリしかり、BMWしかり、マクラーレン・メルセデスしかり。ホンダは完全に現在の流れに乗り損ねてしまったのである。

それにしても、本田宗一郎が存命ならあり得なかったであろう、F1撤退。良くも悪くも、ホンダが「普通の企業」になってしまったということであろう。企業としては採算に合わぬことは「悪」なのである。だが、それにしても、「ホンダ」ならば撤退はしないで欲しかったと思うのはファンのわがままだろうか。寂しい限りである。