講談社青い鳥文庫、パスワードシリーズのリライトを機に、手持ちのパスワードシリーズの読書を再開した。再開というのは、途中からは「買ったが読んでない」積ん読状態だったのだ。

現時点で、パスワードシリーズは24巻まで刊行(他に番外編も何巻かあります)。そのうち20巻までは持っているが、おいらの記憶では11巻までしか読んでなかった。つーことでとりあえず続きを読んでみようと思ったら、11~12巻はどうも読んでたみたい。そんなことはいいのだが、20巻までは読了した。

読み始めたら、何で途中で読むのをやめたかわかった。どうも面白くないのだ。実は購入当時、時期的に身辺にいろいろあって読書どころではなかったので、読んでないのはそれが原因かと思ってたのだが、それだけではなかったようだ。

シリーズが長くなると、マンネリとの戦いになるのはしかたがない。どんなシリーズでも宿命と言えよう。キャラクターを掘り下げたり、新キャラクターを出してみたりと、るーみっくわーるどみたいになってしまうのだろう(毒?)

一番問題なのは、刺激的要素がだんだん強くなってくることだ。死人が出たり、血なまぐさくなったり。とくにミステリーであるだけに、犯罪が扱われるのは避けようがない。しかし、パスワードシリーズはそれをやらなかった。やはり児童文学であることを踏み外さない、作者の矜持があったのだろうか。一時期そんな予感もあったのだが、そこからは持ち直したというか、あまり血なまぐさい路線には転がらず、児童文学にふさわしい方向を維持していると思う。

その代わりに、やはりマンネリに陥るのは自明だった。この作品は単に推理ミステリーではなく、クイズやパズルゲームがちりばめられ、それが人気の一因であるように思う。このところ、そのパズルが「ダジャレベース」になっていたのだ。それはあるキャラクターの特徴として描写されてはいたが、若干苦し紛れな感は否めなかった。それでも、そのダジャレパズルが読者に人気だったという。皮肉であり救いでもあった。

それだけではなく、推理の運び方も、やや強引かな?と思える描写も少なくなかった。キャラクターの心情の動きも、無理があると思える部分も見受けられ・・・

ところが。20巻がダントツに面白かった!

パスワードシリーズは、5人の小学生が主人公だ。彼らはインターネット学習塾にある、息抜きのためのフォーラム(懐かしい響きだな)「電子探偵団」の一員なのだ。電子探偵団は、入室条件の難解なミステリークイズを突破した者だけが入室を許されたスペースだ。そこでのチャットを経て、互いの推理力を鍛え、やがて本物の事件に巻き込まれ・・・というのが大まかなプロットだ。

初出時は小学5年生だった彼らも、6年生になり、やがて卒業の時期を迎える。実に19巻を費やし、11年の年月をかけてもなかなか「卒業」しなかったのは、小学校を卒業すると、学習塾を退塾しなければならないという設定しばりがあったからだ。

しかし彼らはついに小学校を卒業し、それぞれが中学に入学する。メンバーの1人などはオーストラリアに転校したほどだ。だが、学習塾にOB用の連絡フォーラムを作ることで、中学生になった主人公たちも電子探偵団であり続けることができることになり、存続が決定したのだ。

この設定が功を奏した。マンネリ気味だったパスワードシリーズだが、主人公たちの環境が一変し、それぞれの私生活に変化が訪れたことで、シリーズにぐっと彩りが加わったのだ。ネット上ではお互いに変化があることに気づきにくいが、リアルワールドでは大きな転換点を迎えたり・・・と、キャラクターに深みが増してきたのである。

小学生時代までの19巻以前をシーズン1,中学生編の20巻以降をシーズン2とよんでもいいくらいだ。

この20巻がぐっと面白くなったおかげで、21巻以降を読みたくなり購入したさかえさんであった。これから読むところである。取り扱う事件も、世界規模になり、長い歴史的背景との因縁があり、と、ずいぶん風呂敷も広がった。キャラクターの1人が忍者の末裔だったなど、苦し紛れな部分もあるにはあるが・・・

ひとつ、不安要素はある。

そもそも小学校高学年向けという対象年齢のためか、主人公たちの間に恋愛感情が芽生えるエピソードがある。恋愛の要素は、長いシリーズにおいては扱いがむずかしい。読者アンケートにおいても、「※※と☆☆のラブラブを発展させてください!」というものが多いらしい(^-^;)のだが、彼らが中学生ということもあるが、進展があってはまずいのだ。そこがゴールになってしまう。恋愛要素がメインである「ラブストーリー」ならそれでも良いのだが、それがあくまでも副次的要素である場合、シリーズのゴールとシンクロさせないと、ぐだぐだになる恐れがある。

良い、というか悪い例がキム・ポッシブルだ。論評はいろいろあるだろうが、おいら的にはキムとロンが相思相愛になってからの最終エピソードは、かなり苦痛だった。メインのストーリーの方がどうにもしまらない。キムの恋愛成就が収束感を与えてしまっていたように思う。

個人的には、パスワードシリーズの魅力は日常描写だ。風浜という架空の街で、そこに生きる子供たちの生き生きとした日常がまぶしい。そこだけは変わらないで欲しいと願う。

さてさて、とりあえずは21巻以降を読んでみよう。