2012年8月3日深夜の「タモリ倶楽部」は、久々に面白かった。いわく、「特殊音楽家」2人にスポットを面白おかしくあてたバラエティなのだが。

まずは萩原佳明さん。正確には音楽家では無くエンジニアなのだそうだが。

簡単に言うと、時刻表を音階に置き換えて音楽を作っちゃう、ということ。

電車が発車するタイミングを音を発するタイミングに置き換え、音階は路線IDと時刻から音の高さに変換して、それで音楽を作るというもの。

詳しくは自主製作CDのWEBで どうぞ。現代音楽の大家にリスペクトした曲名が楽しい。

まあ、タモリはじめ多くの人が、どれだけ説明しても「はあ?」で終わってしまうのは致し方ないことだとは思う。けど、現代音楽ってだいたいこんな感じで、スティーブ・ライヒやシュトゥックハウゼンらに代表される現代音楽も、「図形から楽譜を作る」とか「幾何学的な何かを音符に置き換える」ということで、行き詰まり感のあった音楽を新たな地平に誘ってきたわけで。

「何の意味があるの?」だとかいう感想を発している時点で、思考停止していることを認めてしまった「敗者」になってしまう。と毒を吐いてみる。

続いては「ウダー」なる新楽器を発明した宇田道信さん。

これがウダー。両手で弾きます。音はオカリナ的な電子音なんだけど、おそらくシンセ音源でいろいろ音は変えられる?

でっかいネジみたいなウダー。簡単に言うとセンサー技術を利用していて、長い一本のロープのある位置を押さえると、その位置に応じた音階で音が出る。端っこが最低音で、もう一方の端っこが最高音。この間のどこを押さえても、連続的に音階が変わる。「ぬいぐるみ動物のしっぽをつまむと、つまむ位置で音階が変わるおもちゃ」があるが、あの感じ。

で、それを円筒の表面にらせん状に巻き付けると、ウダーになる。

ちょうど1周でオクターブ変わるので押さえた位置の隣のロープを押さえればオクターブ上、もしくは下になる。そして和音も出せる。

これまた「それが何なの?」という感想が出てくるのは、これまた致し方ない。 だが、宇田さんの言葉にはうなずけるものがある。

「ピアノだと、キーが変わると鍵盤の弾き方が変わってしまう。Cスケールならドレミファソラシド全部白鍵だが、Cシャープだと白鍵と黒鍵をごちゃ混ぜに弾かなきゃならない」

こういうことに疑問を持つことは発想が柔軟な証拠なのだが、頭の堅い人間は「それのどこが問題なんだ?」という回答をしてしまう。既存の理論や技術に対し疑問を抱かない、そこから逸脱したり飛躍すると、とたんに受け入れられない、そんな人って少なくないと日々思う。ウダーをどう受け止めるかで、頭の柔らかさを試されている気さえしてくる。

そもそも、これだけテクノロジーが日々発展を遂げているのに、それを生かした新しい楽器というものが登場しないのは、言われてみてオカシイと気づいた、頭の固いオイラがいる。テクノロジーでDTMやらボーカロイドのようなソフトウェアの発展は成されたが、楽器というハードに「かつて無かったもの」が現れなかったのが、むしろ不思議だ。

宇田さんの「フレットレスで和音を出せる楽器が欲しかった」という言葉は、音楽好きの人ならわかると思う。

今回の萩原さんや宇田さんのような、豊かで柔軟な発想が出来る人間を評価するかしないか、受け入れられるか入れられないかで、こちらの頭の柔らかさを試される、そんな今回のタモリ倶楽部でした。